エステティシャンが辞めやすいと言われる理由と、長く続けられる職場の見分け方

美容関連

「エステの仕事は好きだけど、すぐ辞める人が多いって聞くと不安になります」。
美容業界専門のキャリアアドバイザーをしていたころ、専門学校の学生さんから何度もこう相談されました。

はじめまして、佐伯由香です。
美容専門学校を卒業して大手エステサロンに入り、8年間エステティシャンとして働きました。
最後の2年は店長として、新人の採用や教育も担当しています。
その後は美容業界専門の人材紹介会社で5年間、サロンで働きたい方の就職や転職をお手伝いしてきました。

「辞めやすい」という話は、半分は当たっています。
ただ、辞める理由の多くは職業そのものより、職場の選び方で避けられるものです。

この記事では、国と業界の調査データで「本当に辞めやすいのか」を確かめます。
そのうえで、長く続けられる職場を入社前に見分ける方法を、求人票・面接・クチコミの順にまとめました。

エステティシャンは本当に辞めやすいのか

最初に、数字で確かめておきます。
エステティシャンだけを切り出した公的な離職率は、実は公表されていません。
そこで、エステが含まれる業種の統計と、美容業界に絞った民間調査の2つを見ていきます。

国の統計では、エステを含む業種の3年以内離職率は6割前後

総務省の日本標準産業分類では、エステティックサロンは「エステティック業」として、大分類の「生活関連サービス業,娯楽業」に入っています。
理容・美容・クリーニング・旅行・冠婚葬祭なども同じ分類です。

厚生労働省が2025年10月に公表した新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)によると、この業種の就職後3年以内の離職率は次のとおりです。

学歴生活関連サービス業,娯楽業全産業
高校卒61.5%37.9%
大学卒54.7%33.8%

全産業と比べて20ポイント以上高く、高卒・大卒ともに産業別で2番目に高い数字でした。
1位は宿泊業,飲食サービス業です。

ただし、これはエステ単独の数字ではありません。
美容室やクリーニング店なども含めた業種全体の傾向として読んでください。

エステ職に絞った調査でも、最初の職場を3年未満で離れた人が6割

エステティシャンに絞ったデータとしては、株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミーの美容サロン就業実態調査(2026年)が参考になります。
2026年1〜2月にインターネットで行われた調査で、美容師やネイリストなど6つの職種を比べられるのが特徴です。

この調査で、社会人になって最初の職場がエステサロンだった755人に在籍期間を聞いています。
結果は次のとおりでした。

  • 3カ月未満:6.4%
  • 3カ月以上6カ月未満:9.1%
  • 6カ月以上1年未満:15.1%
  • 1年以上3年未満:31.5%

合計すると、3年未満が62.1%です。
1年未満だけでも30.6%あり、3人に1人近くが最初の職場を1年たたずに離れています。

この設問には、今も同じ職場で働いている人の回答も含まれます。
厳密な離職率とは違いますが、「最初の職場に長くいない人が多い」という傾向ははっきり読み取れます。

エステティシャンが辞める理由

では、なぜ辞めるのか。
同じ調査には、辞めた理由を聞いた設問が2つあります。

最初の職場を辞めた理由の1位は「ノルマ」

最初の職場を辞めた理由(複数回答)で、エステティシャンの1位は「ノルマが厳しかったから」の23.7%でした。
美容サロン6職種の合計では8.3%なので、エステだけが大きく飛び抜けています。

エステサロンでは、施術のほかに化粧品やコース契約をおすすめする場面が多くあります。
私が働いていたサロンでも、月ごとの売上目標が店舗ごとに決まっていました。

目標があること自体は、仕事の張り合いにもなります。
つらくなるのは、達成できなかったときに給与や評価で強く責められる職場です。
店長時代に面談した新人さんの中にも、施術は大好きなのに、販売の数字が重荷で表情が曇っていく人がいました。

人間関係・給与・休みの少なさも上位に並ぶ

ノルマ以外の理由も見てみます。
最初の職場を辞めた理由で、ノルマに続いたのは次の項目です。

  • 人間関係が合わなかった:18.9%
  • 給与・収入が低かった、上がりにくかった:17.4%
  • 安定した給与をもらえなかった:16.8%
  • 残業が多かった:16.6%
  • 休日を取得しにくかった:14.8%
  • 体調を崩した:14.6%

エステティシャンという職業そのものを離れた人(2,278人)に聞いた設問でも、上位は同じような顔ぶれでした。
人間関係が23.2%、給与への不満が23.0%、休みの少なさや労働時間の長さが20.7%です。
ここでもノルマは18.1%あり、美容師の4.4%と比べると4倍以上になります。

結婚・妊娠・出産を理由に挙げた人も15.8%いました。
土日祝日に休みにくく、夜まで営業するサロンが多いので、家庭との両立でつまずきやすい仕事です。

辞める理由の多くは職場によって変わる

並んだ理由をよく見ると、ノルマ、人間関係、給与、残業、休日と、どれもサロンの方針や制度でかなり変わるものばかりです。
施術の仕事が合わなかった、という理由は上位に入っていません。

同じ調査で、現役のエステティシャン500人に「働くうえで最も重要なこと」を1つだけ選んでもらった結果も出ています。
1位は「働いているスタッフの人柄」で21.0%、2位は「給与」で14.4%でした。

仕事内容より、誰とどんな条件で働くかが続けられるかどうかを左右する。
現場にいた私の感覚とも合う結果です。
だからこそ、入社前の見極めで防げる離職は多いと考えています。

長く続けられる職場の見分け方

ここからは、入社前に確かめられることを順番に紹介します。
求人票、面接や見学、公的な制度、クチコミの4つです。

求人票で確かめたいこと

求人票は、条件を比べるための最初の材料です。
私が相談者の方と一緒に求人票を見るときは、次の点を必ず確認していました。

  • 給与のうち固定で出る部分と、歩合や手当で変わる部分の割合
  • 固定残業代が含まれる場合、何時間分でいくらなのか
  • 月の休日数と、土日祝日に休みを取れるかどうか
  • 研修の期間と、研修中の給与
  • 産休・育休から復帰した人がいるか、時短勤務は子どもが何歳まで使えるか

固定残業代は、若者雇用促進法にもとづく国の指針で、求人での示し方が決められています。
基本給の額、何時間分の残業代にあたるか、それを超えた分は追加で支払うこと、の3点が書かれているかを見てください。
書き方があいまいな求人は、面接で必ず確認しておきましょう。

面接や見学で聞いておきたいこと

求人票には出てこない実態は、面接や店舗見学で聞くのがいちばん確実です。
聞きにくいと感じるかもしれませんが、長く働くための質問を嫌がるサロンは、それ自体がひとつの判断材料になります。

実際に使える聞き方の例を挙げます。

  • 「店舗やスタッフごとの売上目標はありますか。達成できなかった月は、給与や評価にどう反映されますか」
  • 「スタッフの皆さんは、実際には何時ごろに退勤されていますか」
  • 「営業時間外の技術練習は、勤務時間に含まれますか」
  • 「入社3年目くらいの先輩は、どんな役割を任されていますか」
  • 「産休や育休を取って戻ってきた方は、今どんな働き方をされていますか」

ノルマについては、目標があるかどうかより、未達のときの扱いを聞くのがポイントです。
「目標はあるけれど、届かなくても減給はない」というサロンと、「未達が続くと降格」というサロンでは、毎月の気持ちの重さがまったく違います。

店舗見学ができるなら、スタッフ同士の会話や表情も見ておきましょう。
「スタッフの人柄」が最重要という調査結果のとおり、合う・合わないは実際の空気でしか分かりません。

新卒なら「職場情報の提供」を求められる

これから新卒で就職する方には、ぜひ知っておいてほしい制度があります。
若者雇用促進法にもとづく職場情報の提供制度です。

専門学校を含む学校の在学生や卒業生は、新卒者等を対象にした募集であれば、応募先の企業に次のような情報の提供を求められます。

  • 直近3事業年度の新卒採用者数と離職者数、平均勤続年数
  • 研修の有無と内容、メンター制度の有無
  • 月平均の残業時間、有給休暇の平均取得日数、育休の取得状況

厚生労働省の説明では、説明会や面接の場で口頭で伝える方法も認められています。
「直近3年の新卒の離職者数」は、まさに「長く続けられるか」を測る数字です。
なお、新卒者等を対象にしていない中途採用の求人では使えないので、転職の方は面接で直接聞いてみてください。

クチコミは「いつ・誰が書いたか」を見て読む

企業のクチコミサイトは、働いた人の声を知る手段として便利です。
ただ、読み方を間違えると判断を誤ります。

まず、投稿できる人の条件を知っておきましょう。
OpenWorkの回答ガイドラインでは、正社員か契約社員として1年以上勤務した人だけが投稿できます。
アルバイトや派遣社員は投稿できません。

先ほどの調査では、最初の職場を1年未満で離れた人が30.6%いました。
そうした人たちの声は、このサイトには構造的に載りにくいことになります。

もうひとつ大事なのが、投稿の時期と投稿者の立場です。
クチコミを読むときは、点数より先に次の項目を見るようにしています。

見る項目確認する理由
投稿した年制度や経営方針が変わると、職場の実態も変わるため
職種エステティシャンと本社職では働き方が違うため
在籍期間1年と10年では見えている範囲が違うため
現職か退職済みか退職者の声は、辞めた理由に引っ張られやすいため
入社経路新卒と中途では、比べている基準が違うため

たとえば、たかの友梨で新卒から働いた社員のクチコミを見てみます。
2017年に、在籍3〜5年で退職した元エステティシャンが「女性の働きやすさ」について書いたもので、冒頭は「いまのたかの友梨は働きやすいです。」という一文です。
この回答者は月の残業時間を3時間、有給休暇の消化率を100%と評価しています。

こうしたクチコミは「2017年時点で、新卒から数年働いたエステティシャンがこう感じていた」と読むのが正確です。
そのうえで、今の状況は会社が公表しているデータで確かめます。

たかの友梨ビューティクリニックを運営する株式会社不二ビューティは、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に、正社員女性の平均継続勤務年数を11年、正社員女性の育児休業取得率を100%と登録しています(2026年9月時点)。
採用サイトのQ&Aでは「ノルマはございません」と答え、達成できなかった場合のペナルティや減給もないと説明しています。

クチコミで気になった点を、会社の公表データや面接での質問で確かめる。
この順番で情報を重ねると、1件の投稿に振り回されずにすみます。
女性の活躍推進企業データベースは、ほかのサロンを調べるときにも使えます。

まとめ

エステティシャンが辞めやすいと言われるのには、根拠があります。
エステを含む業種の3年以内離職率は高卒61.5%、大卒54.7%で、全産業より20ポイント以上高い水準です。
エステに絞った調査でも、最初の職場を3年未満で離れた人が62.1%いました。

一方で、辞めた理由の上位はノルマ、人間関係、給与、残業、休日と、職場によって大きく変わるものが並んでいます。
入社前に確かめておけば、避けられる離職は少なくありません。

  • 求人票で、固定給の割合、固定残業代の中身、休日数を確かめる
  • 面接では、売上目標が未達のときの扱いと実際の退勤時刻を聞く
  • 新卒なら、職場情報の提供制度で新卒の離職者数を確認する
  • クチコミは投稿の時期と立場を見て、会社の公表データと照らし合わせる

エステの仕事は、お客さまが鏡を見て笑顔になる瞬間に立ち会える、本当にやりがいのある仕事です。
その楽しさを長く味わうためにも、「どのサロンで働くか」には時間をかけてください。
迷ったときは、この記事のチェック項目を一つずつ埋めていくところから始めてみてください。

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