はじめまして、フリーランスで美容ライターをしている水野彩香です。
元々は化粧品メーカーの広報部に8年ほどいたんですが、出産を機に退職して今に至ります。
6歳と3歳、2人の子供がいます。
先日、ちょっとした衝撃がありました。
6歳の長男が、冷蔵庫にあった卵ときゅうりで「サラダ」を作っていたんです。
誰にも頼まれていないのに。
しかも、マヨネーズの量が絶妙でした。
「え、いつの間にそんなことできるようになったの?」
聞いたら「いつも見てたから」と、さらっと返されました。
その瞬間、ちょっと胸が詰まったんです。
見ていないつもりだったのは、こっちの方だったのかもしれないと。
この感覚、子育てをしている方なら一度はあるんじゃないでしょうか。
子供の成長は毎日見ているはずなのに、気づくときはいつも「突然」です。
今回は、この「勝手に上手くなってた」現象について、少し掘り下げて書いてみます。
「いつの間に?」は、いつも突然やってくる
子供の成長って、毎日一緒にいると気づけません。
身長が伸びたのも、靴がきつくなって初めて「あ、大きくなってる」と発覚する。
体の変化でさえそうなので、心や能力の成長はもっとわかりにくい。
たとえば、こんな瞬間に「いつの間に?」と思ったことはありませんか。
- 届かなかったはずの棚に、普通に手が届いている
- 友達に「大丈夫?」と自分から声をかけている
- 絵本をひとりで最後まで読み上げている
- 靴紐を自分で結んでいる
- 冷蔵庫の中身を見て「これで何か作れそう」と言い出す
どれも、前日までできなかった(と親が思い込んでいた)ことです。
実際には少しずつできるようになっていたんでしょうけど、親の目には「ある日突然」に映る。
これは親が鈍いわけではなくて、構造的に気づきにくいんだと思います。
毎日の変化量が小さすぎて、24時間一緒にいる人間には検知できない。
久しぶりに会った祖父母が「大きくなったねえ」と驚くのは、変化の蓄積をまとめて見るからです。
一番近くにいる親が、一番最後に気づく。
子育ての皮肉みたいなものですが、それだけ日常が密着しているということでもあります。
子供が「勝手に上手くなる」仕組み
観察学習という力
心理学に「観察学習」という考え方があります。
心理学者バンデューラが提唱したもので、ひと言で言えば「見て覚える」学習です。
この学習は4つのステップで進みます。
まず「注意」、つまり対象をよく見る段階。
次に「保持」、見たことを記憶にとどめる段階。
そして「再生」、実際に自分でやってみる段階。
最後に「動機づけ」、やる理由ができる段階。
子供は、親がキッチンに立つ姿を思った以上に見ています。
包丁の持ち方、火加減の調整、味見のタイミング。
言葉で教えなくても、目で吸収して、頭の中で手順を組み立てている。
私の長男が卵サラダを作れたのも、おそらくこのプロセスです。
私が何度も作っている横にいて、手順を覚えていた。
教えた記憶はないのに、結果として「教わっている」状態になっていたわけです。
子供にとっての「動機づけ」は、案外シンプルです。
「お母さんが喜ぶかもしれない」「自分もやってみたい」。
それだけで十分なんだと思います。
動画世代の独学力
今の子供たちには、もう一つ強力な学習手段があります。
YouTubeやTikTokの料理動画です。
うちの長男も、タブレットで料理動画をよく見ています。
最初は「まあ見てるだけだろう」と気にしていませんでした。
でも実際にキッチンに立ったとき、動画で見た手順をなぞっていて驚きました。
「卵は平らなところで割るんだよ」と言われたとき、私はそんなこと教えた覚えがない。
聞けば、YouTubeの料理チャンネルで覚えたとのこと。
親の料理を見る「観察学習」と、動画から学ぶ「独学」。
この二つが組み合わさると、料理教室に通わなくても着実にスキルが上がっていく。
親が知らないレシピを子供が知っていた、なんてことも珍しくありません。
先日、長男に「バスク風チーズケーキって知ってる?」と聞かれたときは、完全に自分の知識が追い抜かれた感覚がありました。
6歳児がバスク風チーズケーキを語る時代です。
料理をする子供は、心も育っている
「料理ができるようになるのはいいこと」というのは感覚的にはわかります。
でも実は、それを裏づける研究がいくつか出ています。
| 研究元 | 対象 | わかったこと |
|---|---|---|
| 東京科学大学(2026年) | 約3,641組の小学生と保護者 | 保護者の調理技術が高い家庭ほど、子供のレジリエンスや思いやり行動のスコアが高い |
| キユーピー×発達心理学者(2024年) | 3〜12歳の子供793名の親 | 親子で料理した子供は自己肯定感が向上。調理を子供に任せるほど効果が大きい |
| お茶の水女子大学・松島悦子先生 | 中高生対象の調査 | 普段料理する子はチャレンジ精神・達成感・工夫する楽しさのスコアが高い |
東京科学大学のプレスリリースによると、料理の効果は「技術そのもの」ではなく、料理を通じて生まれる親子の会話や食卓での時間が媒介になっているそうです。
つまり、上手い下手は関係なくて、親子で食に関わる時間を持つこと自体に意味がある。
キユーピーの調査では、調理工程を子供に任せるほど効果が大きいという結果も出ています。
具体的には、野菜を洗う・切る・炒めるといった工程を子供主体でやらせた場合、自己肯定感のスコアが目に見えて上がったとのこと。
松島先生の研究で個人的に興味深かったのは、料理をする子供は「人に食べてもらう喜び」を強く感じているという点です。
自分のためだけでなく、誰かのために作る。
その経験が自信につながる、というのは大人でも覚えがある話ではないでしょうか。
料理は「小さな成功体験を積み重ねる作業」です。
作って、食べて、おいしい(またはおいしくない)。
このフィードバックの速さが、子供にとってちょうどいい学びのサイクルになっている。
なぜ「料理」が特別なのか
子供の成長を促す活動はたくさんあります。
スポーツ、楽器、絵を描くこと。
その中で料理が少し特殊なのは、「誰かのために作る」という要素が自然に入ってくる点です。
サッカーは基本的に自分の上達が目的になりますし、ピアノの練習も自分との戦いです。
でも料理は、作ったものを誰かが食べる。
「おいしい」と言ってもらえる。
この「他者のリアクション」がすぐ返ってくるのが、料理ならではの特徴です。
子供が台所に立つ動機も、実はここにあるんじゃないかと思っています。
「上手くなりたい」というより、「お母さんに食べてほしい」「家族を驚かせたい」。
技術を磨きたいのではなく、喜ばせたいから作る。
結果として技術がついてくる、という順番です。
だから「勝手に上手くなってた」は、言い方を変えれば「勝手に誰かを思いやれるようになっていた」でもある。
そう考えると、子供の手料理に感動する理由がちょっとわかる気がします。
たかの友梨さんの投稿に、思わずうなずいた
このテーマについて考えていたとき、Instagramで目に留まった投稿がありました。
エステティック業界の大御所、たかの友梨さんの投稿です。
たかの友梨さんといえば、1978年にエステティックサロンを開業して以来、日本の美容業界を牽引してきた人物です。
株式会社不二ビューティの代表取締役会長を務め、紺綬褒章を受章するなど、まさに業界のトップランナーとして走り続けてきた方。
私も前職の化粧品メーカー時代に、たかの友梨ビューティクリニックとのコラボ企画を担当したことがあるので、そのエネルギーはよく知っています。
その投稿は、娘の友花さんがグリンピースのスープやイカ墨のスパゲッティを手作りしてくれた、という内容でした。
しかもお菓子まで。
たかの友梨さん自身はヴィーガンなので「一切口にしていない」とのことですが、「どこにも習いに行っていないのに、こんなに作れるようになって」と、娘の成長をしみじみ感じている様子が書かれていました。
グリンピースのスープとイカ墨のスパゲッティって、難易度がかなり高いメニューです。
それを料理教室にも通わず独学で作れるようになっていた。
まさに「勝手に上手くなってた」の典型的なエピソードだと思いました。
もう一つ印象に残ったのは、ヴィーガンの母に対して肉や魚介の料理を作る、という関係性です。
食べてもらえないとわかっていても、作りたい娘。
食べられないけど、その成長をうれしく感じる母親。
お互いの食のスタイルが違っても、料理を通じて気持ちは通じている。
このやりとりに、親子の信頼が見えた気がしました。
業界の第一線で何十年も走り続けてきた人が、SNSで見せるのは娘の手料理への感動。
こういう瞬間を共有してくれるから、有名人のSNSっておもしろいなと思います。
ビジネスの実績や受賞歴よりも、「娘がスープを作ってくれた」というエピソードの方が、その人の人柄が伝わる。
投稿へのコメント欄にも共感の声が並んでいて、みんな同じことを感じているんだなと思いました。
実際の投稿はたかの友梨さんが子供の成長を綴ったInstagram投稿で読めます。
「見守る」が一番難しい
子供がキッチンに立つと、親はどうしても口を出したくなります。
「包丁、そっちの手で持たないで」「火が強すぎる」「そこ、先に切ったほうがいいよ」。
うちでも毎回このやりとりが発生します。
でも、先ほどの研究データが示しているように、子供に任せる部分を増やした方が成長につながる。
頭ではわかっていても、目の前で危なっかしい包丁さばきを見ていると、つい手が出そうになる。
「見守る」って、子育ての中で一番エネルギーを使う行為かもしれません。
農林水産省の食育推進ページでは、食育を「生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるべきもの」と定義しています。
国の施策としても、子供が食に主体的に関わることの重要性は認識されています。
でも食育って、特別なプログラムを用意するものとは限りません。
- 親が毎日キッチンに立つ姿を見せる
- 食卓で「今日のこれ、おいしいね」と言い合う
- 冷蔵庫の中身を見て「今日は何にしようか」と相談する
- 子供が「やりたい」と言ったとき、とりあえずやらせてみる
こうした日常の積み重ねが、ある日の「いつの間にか作れるようになっていた」につながっている。
たかの友梨さんの娘・友花さんの話も、きっとこういう小さな蓄積の結果です。
子供の「勝手に上手くなってた」を発見するために、親側にできることは意外と限られています。
日々のごはんをちゃんと作って、聞かれたら答えて、失敗しても黙って見ている。
たぶんそれだけで十分です。
子供は自分のペースで、親が思っているよりずっと早く、勝手に育っていきます。
うちの3歳の次男も、最近やたらとキッチンに来たがるようになりました。
長男の卵サラダを見て、自分もやりたくなったみたいです。
今はまだ卵を割ると殻が入るし、きゅうりの皮むきはおぼつかない。
でも数年後、また「いつの間に?」と驚く日が来るんだろうなと思います。
そのとき私がちゃんと気づけるかどうかは、正直わかりませんが。
まとめ
子供の「勝手に上手くなってた」は、本当は勝手ではありません。
親が気づかないところで、子供はずっと見て、覚えて、自分なりに試しています。
たかの友梨さんの投稿を見たとき、うちの6歳の卵サラダを思い出しました。
規模は全然違うけど、「知らないうちにできるようになっていた」という驚きと嬉しさは同じです。
次にお子さんが台所で何かやり始めたら、口を出す前にちょっとだけ見守ってみてください。
きっと、思いがけない成長の瞬間に出会えます。
