「エコ」で稼げる仕事は本当にあるのか?業界別年収レポート

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「環境系の仕事って、やりがいはあっても給料は低いんでしょ?」

転職相談を10年以上受けてきましたが、この質問は本当によく飛んできます。半分正解で、半分は時代遅れの認識、というのが私の答えです。

はじめまして、佐々木健太郎と申します。元キャリアアドバイザーとして大手人材会社で住宅・建設・エネルギー業界の転職支援を10年以上担当し、現在はフリーランスで企業研究と転職コンテンツの執筆をしています。今回はエコ・環境関連の仕事における「リアルな年収事情」を、業界別データと現場で見聞きしてきた裏側のセットで整理しました。

「稼げるエコの仕事」は確かに存在します。ただし、業界選び・職種選び・会社選びを間違えると、年収400万円台で頭打ちになるパターンも珍しくありません。データと経験談の両輪で、迷っている方の判断材料になれば幸いです。

「エコは稼げない」は数年前までの話

まず、認識をアップデートしましょう。エコ・環境関連の仕事の報酬水準は、ここ数年で明確に底上げされています。

GX求人がたった7年で7倍に伸びた

リクルートの調査によると、2023年度のGX(グリーントランスフォーメーション)求人数は2016年度の7.27倍に拡大しました。エネルギー企業やプラント建設会社を中心に求人が急増しており、人材獲得競争は完全な売り手市場です。

7年で7倍は、IT業界の伸びと比べても遜色ありません。私が現役エージェントだった頃、太陽光や蓄電池の求人は「件数自体が少ないニッチ領域」でしたが、今は毎週新着求人がガンガン入る規模になっています。

2035年までに266万人の新規雇用予測

三菱総合研究所の試算では、GX関連職種の求人ニーズは2020〜35年に266万人分が国内で新たに生まれると見込まれています。内訳は再エネ事務職78万人、EVエンジニアなど技術職69万人、生産職63万人など。

これは「エコ業界が伸びる」というふわっとした話ではなく、具体的な雇用枠の数字です。労働需給のバランスが崩れれば、報酬は上がる。当然の流れです。

報酬水準の底上げが起きている

現場で見ていても、5年前に年収500万円だったポジションが、今は600〜700万円のオファーで動いているケースを頻繁に目にします。特にエネルギー大手・サステナビリティコンサル・EV関連の3領域は伸びが顕著です。

「エコ=薄給」のイメージは、業界の急成長スピードについていけていない古い情報です。ここを起点に、業界ごとの実情を見ていきましょう。

業界別「エコ」年収マップ

ひとくちに「エコ業界」と言っても、年収レンジは300万円台から2,000万円超まで幅広く分布しています。代表的な6業界の年収相場を一覧にまとめました。

業界年収レンジ(中央値)特徴
再生可能エネルギー(発電事業者・開発)600〜1,300万円業界トップ層は1,000万円超が当たり前
住宅向け太陽光・蓄電池(販売施工)350〜700万円インセンティブ次第で大きく変動
EV・電池関連(自動車メーカー・サプライヤー)500〜1,500万円エンジニア職は超売り手市場
環境コンサル・ESGコンサル500〜2,200万円上位コンサルファームは突き抜けて高い
廃棄物・リサイクル400〜600万円安定型。専門資格で底上げ可能
事業会社のサステナビリティ専任700〜1,500万円経営直下のキーマンポジション

ここから業界ごとに掘っていきます。

1. 再生可能エネルギー(発電事業者・開発)

太陽光・風力・バイオマスなどの発電所を開発・運営する事業会社が中心です。OpenWorkのランキングによると、電力・ガス・エネルギー業界の上位企業ではENEOSリニューアブル・エナジーが平均年収956万円、ユーラスエナジーホールディングスが1,070万円。シェルジャパンは1,330万円。

職種別では、太陽光発電所開発のプロジェクトマネージャーで年収1,300万〜1,560万円という求人が普通に出ています。発電所のファイナンス、用地取得、許認可、EPC(設計・調達・施工)管理など、専門性が積み重なる領域は高く評価されます。

ただし、ここの求人は「経験者枠」がほとんど。完全未経験から飛び込むのは難しい領域です。30代以降で関連経験がある方が、ここを狙うのが王道ルートになります。

2. 住宅向け太陽光・蓄電池(販売施工)

ここは未経験から飛び込みやすい代わりに、当たり外れが大きい業界です。

平均年収のレンジは350〜700万円程度。基本給は控えめ(月給25〜30万円スタートが多い)ですが、インセンティブで年収を伸ばす設計の会社が大半です。実例として、太陽光営業のキャリアパスを紹介した転職メディアの記事では、1年目は基本給ベースで年収400万円、3年目で目標達成時に600万円、5年目にトップ営業まで上り詰めれば900万円というモデルケースが示されています。中には2〜3年目で1,000万円に達する社員もいるとのこと。

未経験歓迎で月給28万円スタート、インセンティブ次第で年収500〜660万円を狙える求人もあります。たとえばエスコシステムズの求人情報を見ると、こうした条件設計が具体的に確認できます。住宅向け太陽光・蓄電池業界の標準的な給与モデルを把握する材料として参考になります。

ただし、訪販ベースの営業スタイルが中心の会社が多く、新規開拓のハードさは相応です。「やればやるほど稼げる」は本当ですが、「やれない人は基本給だけ」になりやすいのも現実。離職率も業界平均より高めです。

向いている人の特徴:

  • 体力と精神的タフさに自信がある
  • 短期で成果を出して稼ぎたい志向が強い
  • 商品知識を磨いて顧客に提案するのが好き
  • ノルマやインセンティブが「燃料」になるタイプ

逆に「コツコツ安定型」の方は、別業態を検討した方が幸せになれます。

3. EV・電池関連(自動車メーカー・サプライヤー)

電気自動車の普及拡大に伴い、モーター、インバーター、バッテリー、車載充電器などの開発職は完全な「超売り手市場」です。電気系エンジニアの中でも、自動車・半導体・防衛の3分野は特にニーズが集中しています。

完成車メーカーの平均年収は800万円台、トップ層は1,000万円超え。トヨタ系・日産系の関連サプライヤーでも700万〜900万円が中央値で、外資系EVベンチャーでは1,500万円規模のオファーも珍しくありません。

完全未経験は難しいものの、機械系・電気系の業界経験者が「EVシフト」を理由に転職するケースは増えています。年収アップ幅も100〜300万円というケースが普通にあるため、技術系のキャリアを持つ方には狙い目です。

4. 環境コンサル・ESGコンサル

実は、エコ業界で最も年収レンジが広いのがこの領域です。

求人ボックスのデータでは、環境コンサルタント関連の仕事の平均年収は約447万円。一方で、サステナビリティ・環境分野の年収ランキング(サステナブルインサイト調べ)を見ると、トップ層は次のような水準にあります。

  • サステナビリティ投資マネージャー:800〜2,000万円超
  • ESGアナリスト:750〜1,400万円
  • SX/サステナ戦略コンサルタント:600〜2,200万円超
  • 脱炭素コンサルタント(監査法人・専門ファーム):800〜1,600万円超
  • 建設系環境コンサルタント:400〜900万円

同じ「環境コンサル」と名乗っていても、所属する会社(大手ファーム、専門ブティック、監査法人系、独立系)と職種(戦略系、調査系、施工系)で年収は2倍以上違います。

ESG関連の専門性を持っていれば、転職一つで200〜300万円アップは現実的にあり得ます。逆に、独立系の中小コンサルで建築系の調査業務をひたすら回すポジションだと、450万円前後で頭打ちになります。「コンサル」の看板に騙されず、中身を見極めるのが大事です。

5. 廃棄物・リサイクル

意外と知られていない安定型業界です。産廃ドライバーの平均年収は450〜600万円、大型トラックドライバーなら750万円も狙えます。「特別管理産業廃棄物管理責任者」などの専門資格を持っていれば、年収はさらに上振れします。

施設運営や環境分析・リサイクル技術開発などの専門職になると、年収500〜700万円のレンジ。現場系の仕事は人手不足が深刻なため、未経験でも採用されやすいのも特徴です。

派手さはありませんが、「景気に左右されにくい」「資格で年収が上がる」「業界全体が人手不足で買い手市場」という3点セットが揃っており、ローリスクで生活基盤を整えたい方にはむしろ向いています。

6. 事業会社のサステナビリティ専任

近年急増しているのが、メーカー・商社・金融機関などの事業会社がサステナビリティ専任部署を立ち上げて中途採用するケースです。年収レンジは700〜1,500万円。

広告系企業のサステナビリティ担当で1,100〜1,500万円、商社のサステナ投資部門だと部長クラスで2,000〜4,000万円といった求人も実在します。経営直下で動くキーマンポジションになるため、報酬水準も高めに設定されているわけです。

経歴のベース(コンサル経験、ESG関連業務、海外での環境プロジェクト経験など)が問われるため、第二新卒や完全未経験では入りにくいのが難点。30代以降のキャリアアップ候補として狙うのが現実的です。

稼げる人と稼げない人を分ける3つの軸

業界マップを眺めて気づくのは、「エコ業界=高収入」「エコ業界=薄給」のどちらも雑な括りだということです。同じエコ業界の中でも、稼げる人と稼げない人を分ける軸があります。

軸1:上流か、下流か

ざっくり言うと、お金の流れの「上流」にいる仕事ほど年収が高くなります。

  • 上流:発電事業の開発、戦略コンサル、ESG投資、事業会社の経営企画
  • 中流:プラントエンジニアリング、設計、コンサルタント実務
  • 下流:施工管理、訪販営業、現場運用、廃棄物処理

下流が悪いという話ではなく、年収の天井が違うという構造の話です。同じ「太陽光に関わる仕事」でも、発電所開発のPMと住宅訪販の営業では1,000万円近い差が出ます。

自分が長く戦いたい場所はどこか、ここを最初に決めると業界選びの軸がぶれなくなります。

軸2:職種選び

職種で見ると、エコ業界の年収トップ3はだいたい以下の順番です。

  • 1位:戦略系コンサルタント/投資マネージャー(1,000万円〜)
  • 2位:エンジニア(特に電気・制御・ソフト系。EV、再エネ)(700〜1,500万円)
  • 3位:事業開発/プロジェクトマネージャー(700〜1,300万円)

営業職は会社次第で大きくぶれます。住宅向け訪販なら年収400〜700万円のレンジが標準ですが、法人向け再エネ営業や産業用蓄電池営業だと600〜1,000万円の世界。同じ「営業」でも商材と顧客層で全然違います。

エンジニア・専門資格を持つコンサルタント・営業のうち、どれが自分の適性に合うか。ここを冷静に判断しましょう。

軸3:会社選びは「規模よりインセンティブ設計」

転職相談を受けていて感じるのは、「大手だから安心」という思い込みが意外と落とし穴になるケースが多いことです。

エコ業界では、社員30〜100人規模の中堅・専門企業の方が、大手より高インセンティブ設計を採用しているケースが珍しくありません。住宅向け太陽光・蓄電池業界はその典型で、大手より中堅の方が成果還元率が高いことが多い。

逆に、中堅でもインセンティブ設計が甘い会社は、頑張っても基本給に毛が生えた程度しか上がりません。求人票の「想定年収◯◯万円」だけ見て決めるのではなく、「給与モデルの根拠(どういう成果でどう増えるのか)」を面接で必ず確認することをおすすめします。

ケース別・現実的な年収アップ戦略

「で、自分は何から始めればいいの?」という疑問に答える形で、年代別の現実的なルートを書きます。

20代未経験から飛び込むなら

未経験歓迎枠が豊富なのは住宅向け太陽光・蓄電池の販売施工系、廃棄物・リサイクル系、施工管理系の3つです。

  • 短期で稼ぎたい:住宅向け太陽光・蓄電池の営業(年収500〜700万円目標)
  • 安定基盤を作りたい:廃棄物・リサイクル系(年収400〜500万円から積み上げ)
  • 手に職をつけたい:施工管理・電気工事士(資格取得後に年収500万円超)

20代の強みはポテンシャル採用が通ること。30代以降は「経験」が問われるため、20代のうちにエコ業界での実績を1〜2年積んでおくと、後のキャリアの選択肢が一気に広がります。

30代の異業種からなら

30代で「これからエコ業界に挑戦したい」という相談はかなり多いです。私のおすすめは、これまでのキャリアと接続できる領域を探すこと。

  • 元商社マンなら、再エネ事業開発・EPC営業
  • 元IT系なら、エネルギーマネジメントシステム(EMS)・気候Tech
  • 元コンサルなら、サステナビリティコンサル・ESGコンサル
  • 元金融なら、ESG投資・サステナビリティファイナンス
  • 元営業なら、産業用蓄電池・法人向け再エネ営業

「ゼロからの転職」より、「既存スキル+環境領域」のかけ算で攻めた方が、年収を維持しながら業界シフトできます。30代は転職一発で200万円アップも狙えるのがエコ業界の強みです。

40代以上の経験者なら

40代以降は、これまでのキャリアの延長線上で「サステナ要素を加える」のが現実的です。

  • 経営企画経験者:事業会社のサステナビリティ責任者(年収800〜1,500万円)
  • プロジェクトマネジメント経験者:再エネ発電所開発PM(年収1,000万円超)
  • 専門技術者:EV関連メーカーの開発リード(年収900〜1,500万円)

未経験で飛び込むのは難易度が高いものの、関連経験があれば40代でも年収を上げて転職できる業界です。むしろ即戦力ニーズが高いので、年齢を理由に諦めるのはもったいない。

「エコで稼ぐ」を選ぶときに見落としがちな注意点

最後に、現場でよく見る「失敗パターン」を3つ共有します。

注意点1:高インセンティブの裏側

「年収700万円達成可能!」という求人広告を見て飛び込んだ結果、半年後に辞めてしまうパターン。住宅向け太陽光・蓄電池の訪販営業に多いです。

成果を出せば本当に700万円届きます。ただ、達成しているのは上位2〜3割の社員だけで、残りは基本給ベースの400万円台で疲弊している、というケースも珍しくありません。離職率の数字や、給与モデルの中央値(平均ではなく)を必ず確認してください。

注意点2:成長業界=必ず伸びる会社、ではない

GX市場全体が伸びるのは確実ですが、その中で生き残る会社と消える会社は分かれます。特に住宅向け太陽光・蓄電池業界は参入障壁が低く、業績不振や淘汰のリスクもゼロではありません。

会社選びの際は、業界全体のトレンドだけでなく、その会社固有の財務状況・主要取引先・経営陣の経歴も最低限チェックしてください。OpenWorkや会社四季報で確認するだけでも、地雷を踏むリスクは大きく下げられます。

注意点3:環境貢献意欲と稼ぎたい意欲のバランス

エコ業界に飛び込む人の動機は、大きく2つに分かれます。「環境への貢献」を重視する人と、「成長業界で稼ぎたい」人。

両者は両立しますが、優先順位を最初にはっきりさせておかないと、入社後に「思ってたのと違う」となりがちです。例えば、年収重視で住宅向け訪販に入った人が「もっと社会的意義のある仕事がしたい」と悩むケース、逆に環境貢献重視で公益系団体に入った人が「年収が低くて生活が苦しい」と相談に来るケース、両方見てきました。

自分が何を一番取りたいのか、ここを言語化してから業界・会社を選びましょう。

まとめ

エコ業界は「稼げない」イメージから「稼げる業界」へ大きく変化中です。要点を整理します。

  • GX求人は2016年比で7倍超に拡大、2035年までに266万人の新規雇用予測
  • 業界別年収レンジは300万円台から2,000万円超まで幅広い
  • 高年収を狙うなら、再生可能エネルギー開発、EV関連エンジニア、ESG/SXコンサル、事業会社のサステナ専任が有力
  • 未経験から短期で稼ぎたいなら、住宅向け太陽光・蓄電池の営業職が現実的な選択肢
  • 「業界・職種・会社」の3軸で慎重に選べば、年収アップは十分狙える

「環境にいいことをしながら、ちゃんと稼げる仕事」は、もう絵空事ではありません。自分の年代・経歴・志向に合うルートを冷静に選んで、納得のいくキャリアシフトを実現してください。

転職活動で迷ったときは、複数のエージェントに登録して、業界の温度感を直接聞いてみるのが一番です。求人票の数字だけでは見えない情報が、必ずあります。

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